要約

I.FDルール

  • FDルール導入を77%のアナリストが【評価】。施行前のアンケート調査78%とほぼ同じ。(Q11参照)
  • アナリスト業務の姿勢・行動への影響(変化)は、【ほとんど変化がない】と【変化しつつある】が各々50%と分かれた。ただし、セルサイド・バイサイドに分解してみると、FDルールの施行が、バイサイドの業務の姿勢・行動にあまり大きな影響を与えていないのに対して、セルサイドの業務の姿勢・行動にはより大きな影響を与えていることが伺えた。(Q1参照)
  • FDルール導入の3つの積極的意義についての評価
  • (1)施行前、44%のアナリストが【むしろ、発行体による情報開示がこれまでより後退し、対話がしにくくなることを懸念する】と回答したが、施行後には、30%のアナリストが【むしろ、情報開示がこれまでより後退した】と回答し、懸念したほどには投資家との対話は後退していないことが伺えた。一方で【早期の情報開示が進み対話が促進した】と回答したアナリストは6%に留まり、また、【施行前と情報開示は変わらない】と回答したアナリストも55%となり、施行前に予想したほど投資家との対話は、進んでいないことが伺えた。(Q3参照)
  • (2)アナリストによる、より客観的で正確な分析及び推奨が行われるための環境整備については、施行後、【むしろ、そのような環境は後退した】と回答したアナリストが12%となり、懸念したほどの後退にはつながっていないことが伺えた。一方で【そのような環境が整備された】と回答したアナリストは13%に留まり、また、【施行前と環境は変わらない】と回答したアナリストも68%となり、施行前に予想したほど環境整備は、進んでいないことが伺えた。(Q6参照)
  • (3)中長期的な視点に立って投資を行うという点では、施行前に予想したほど投資家の意識改革は、進んでいないことが伺えた。(62%のアナリストが【投資家の意識改革には貢献していない】と評価。)(Q7参照)
  • 「未公表の重要情報」の範囲についての企業との対話状況はあまり進んでいないことが伺えた。(60%弱のアナリストが【発行体は、公平性を意識しすぎて「未公表の重要情報」の範囲を金融庁のガイドライン以上の範囲にしようとしている】と回答。また、40%強のアナリストが【「未公表の重要情報」について発行体とは特に議論していない】と回答。)(Q8参照)
      金融庁のガイドライン(フェア・ディスクロージャー・ルールガイドライン)
  • 施行前、95%のアナリストは、情報の公表方法としてホームページへの掲載が認められたことを【評価できる】と評価。施行後は、企業のホームページへの積極的な情報掲載を評価したアナリストは30%強に留まった。(33%のアナリストが【より積極的に掲載を行っている】と回答。)(Q9参照)

Ⅱ.アナリスト業務におけるESG情報(非財務情報)

  • 企業価値評価において、財務情報に加えて、ESG情報(非財務情報)を考慮することが【重要だ】と回答したアナリストは79%。セルサイド・バイサイドに分解して見ると、バイサイド92%とセルサイドの75%に比べESG情報(非財務情報)をより重視していることが伺えた。(Q13参照)
  • 考慮すべき事由として、上記のアナリストの内、約90%が【中長期的に成長する企業の分析には財務情報とESG情報(非財務情報)を統合した分析が欠かせない】と回答。【投資家の中長期的な投資リターンの拡大を目指す投資行動の要請が高まっている】と回答したアナリストも約70%と多かった。(Q14参照)
  • ESG情報(非財務情報)を【現時点では、重要でない】と回答したアナリストは19%。その事由としては、【ESG情報(非財務情報)の開示内容が企業価値評価に結び付くような内容になっていないため】が最も多かった。それ以外では、【ESG情報(非財務情報)は運用パフォーマンスに影響していない】ことや【企業サイドでは、統合された形でのESG情報(非財務情報)を提供できる態勢が未整備】及び【投資家サイドでは、財務情報とESG情報(非財務情報)を統合した形で分析し、企業と建設的な対話をする態勢が未整備】も多かった。(Q15参照)
  • ESG情報の各情報の重要性は、【非常に重要】とした評価したアナリストの比率に限定して見ると、環境情報が21%、社会情報が24%に対して、ガバナンス情報が57%となり、ESG情報の中では、ガバナンス情報が企業価値評価において最も重要な位置づけとなっていることが伺えた。(Q16参照)
  • ESG情報(非財務情報)が今より多く用いられるためには、【投資家からのESG情報(非財務情報)に対するニーズがより一層高まる】及び【投資家サイドにおいて、財務情報とESG情報(非財務情報)を横断的・統合的に分析し、企業との建設的対話に結び付けることが不可欠】と回答したアナリストが、共に90%近くとなり、最も多かった。さらに、【企業においては、ESG情報(非財務情報)を記載した「統合報告書」の開示内容を価値創造のプロセスに結び付けた内容に充実させること】が必要とするアナリストも80%強と多かった。(Q17参照)
  • 投資家等のあるべき具体的な態勢としては、43%のアナリストが、【アナリストが所属する部署(企業調査)とESG情報(非財務情報)を担当する部署(新設を含む)が連携を取って対応する】とし、次に39%のアナリストが、【同一アナリストが企業の財務情報に加え、その企業のESG情報も担当する】と回答した。両者を合計すると社内対応が82%となり、外部活用は10%に留まった。(Q18参照)

Ⅲ.AI導入によるアナリスト業務への影響

  • AIの導入状況は、半数強(54%)のアナリストが、【現在、AI導入の具体的な検討に着手している】(41%)又は【既に、AI導入がされている】(13%)と回答。AIがアナリスト業務に次第に導入されつつあることが伺えた。(Q19参照)
  • AIの導入分野としては、上記アナリストの内、70%強が【決算コメントなどの定型業務】に留まっていると回答。(Q20参照)
  • AI導入により、アナリスト業務は、70%強が【情報の深掘りや独自の視点の提供が以前にも増して求められる】、60%弱が【情報提供のスピードが以前より増してくる】と回答し、質量両面でアナリスト自身のレベルアップが求められることを示唆した。なお、【AI導入により残業時間が減る】と考えているアナリストは35%に留まった。(Q21参照)
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