米国における証券アナリストの利益相反問題-規制強化の動きと連邦/州当局による共同の取り組み-

2002年春以来ニューヨーク州のスピッツアー司法長官が、アナリストの利益相反問題に関し、マスメディアの注目を集める活発な調査活動を行ってきた一方で、遅れを取っていたかに見えたSECは夏以降積極的な姿勢に転じ、自ら複数の証券会社の調査に乗り出す一方、2002年8月初旬には「アナリスト・サーティフィケーション規則(Regulation Analyst Certification)」を提案し、パブリック・コメントを求めた(同規則は2003年2月にSEC承認)。また、2002年7月30日に成立した企業改革法(サーベンス・オクスレー法)において、アナリストの利益相反問題にかかわる規制が新たに規定されたことを受け、SECは、2002年10月初旬、アナリストの利益相反に関するNASD/NYSE規則(2002年5月承認)を更に強化する改正案の要旨を発表した。
アナリスト・サーティフィケーション規則は、証券会社が発行するリサーチ・レポートにおいて、当該レポートが調査対象証券および調査対象会社に対するリサーチ・アナリストの個人的見解を正確に反映していること、および、そのリサーチ・レポートに掲載されている見解または特定の投資推奨に関して、そのアナリストが報酬を受け取ったかどうかにつき、明確で、はっきりと認識し得る宣誓を行わなければならないこと等を規定している。また、アナリストの利益相反に関するNASD / NYSE規則(2002年5月)の改正案は、アナリストの報酬を投資銀行部門の影響からさらに隔離するため、アナリストの報酬を社内に設ける委員会の検討と承認にかかわらしめることとし、かつその委員会が、アナリストによる投資銀行部門の業務全般に対する貢献を考慮することを禁止するとともに、アナリストが投資銀行部門の顧客または見込み顧客に対する勧誘またはいわゆる“ピッチ・ミーティング”に参加することを禁止すること等を提案した。
2002年春以来、SECとニューヨーク州司法当局の間では、ウオール・ストリートの証券会社を巡る問題の解決の主導権争いが続き、冷ややかな関係が続いてきたと見られていたが、2002年10月初、NYSEのイニシアティブで、両者の協力関係樹立の動きが進み、連邦の規制当局と州当局が共同してアナリストの利益相反問題と新規公開株の配分問題に取り組んでいくこととなった。

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