証券アナリストが担当会社の発信情報に登場することについての考え方

平成14年9月
社団法人 日本証券アナリスト協会
規律委員会

はじめに

証券アナリストへの社会的認知度が高まるのにともない、証券アナリストが担当会社の発信情報に登場を求められる事例が増えている。しかし、簡単に応じてよいかどうか、迷う場合も少なくない模様である。また、最近ある会員が担当会社の広告に登場したが、これについて一部理事から、職業倫理上、議論の必要ありとの問題提起があった。そこで規律委員会では、この種の問題に関する意見交換を行った。以下にその意見を取りまとめて紹介し、会員の参考に供したい。

1.基本的な考え方

会社が発信する情報の性格、登場する証券アナリストの役割などは、いずれも多種多様であってケースごとに考慮すべきであり、あらかじめ網羅的に多くのケースを想定して是非を示すことは難しい。また会員の自己責任尊重の意味でも、適当でない。したがって、判断はあくまでもケース・バイ・ケースで会員自身が行うべきであるが、次の諸点は判断の基準として重要と思われる。

(1) 証券分析業務の公正性、客観性を阻害する危険が大きくないか。

(2) 投資家に証券分析業務の公正性、客観性が阻害されているとの疑いを抱かせ、 証券アナリストの信用を損なわないか。

(3) 消費者等情報の受け手を誤解させるメッセージを送ることにならないか。

2.会員が担当する会社の広告・宣伝に登場し、その会社との取引や製品の購入の推奨を行う場合

上記のような判断の基準に照らした場合、会員が証券アナリストの肩書きで担当する会社の広告・宣伝に登場し、その会社との取引や製品の購入を勧める行為は、 それ自体が直ちに定款や職業行為基準に違反するというものではないにせよ、次の理由から行わないことが望ましい。

a. 証券分析業務が公正性と客観性を保持して行われるためには、証券アナリストが担当会社すべてを公平な立場から評価することが前提となるが、広告・宣伝に登場し特定の会社の製品・サービスについて好意的な評価を示し、取引や製品の購入を勧めることは、出発点で前提を放棄することになり、証券分析業務の公正性・客観性が保たれているかにつき投資家から疑いを招きやすい。

b. 証券分析業務と広告・宣伝のための情報発信は、ともにその会社の評価に係わると言う意味で共通性があるが、目的が異なるため両立の難しい行為である。証券分析業務は、重要な事実であれば会社にとって良い情報も悪い情報もすべて明らかにすることを目的としており、その結果その会社の株式を売り推奨することもある。これに対し、広告・宣伝は、消費者によるその会社との取引や製品の購入の促進を目的とする行為である。このように目的の相異なる行為を同一の会社について矛盾を生じることなく行うことは極めて困難であり、結果的に証券分析業務を歪めることにつながりかねない。

c. 広告・宣伝に登場して取引や製品の購入を推奨する行為は、証券分析業務とは全く異なる目的と手法をもって行われる別の行為である。それにもかかわらず、証券アナリストの肩書きで行う場合には、それがあたかも証券分析業務の結果として行われ、綿密な調査・分析に基づく裏づけがあるかのように情報の受け手をミスリードする恐れがある。

担当する会社の広告・宣伝に登場し、その会社との取引や製品の購入を推奨する行為は、先にも述べたように、そのこと自体で直ちに定款や職業行為基準に違反することになるわけではない。しかし、そのような行為を行ったことが現実に証券分析業務の公正性・客観性を阻害することにつながった場合は、当然ながら職業行為基準違反の問題になりうるし、会員の信用が大きく損なわれたような場合であれば、会員は品位の保持に努め、会員の名誉と信用を傷つける行為をしてはならないという定款の規定に違反すると判断されることもありうる。

(注) 特定会社の広告・宣伝の中で、証券アナリストのメッセージは当該会社について直接触れていない場合であっても、広告・宣伝全体を見た場合、当該会社との取引または製品の購入を推奨しているとの印象を与える場合は、上記と同様に考えるべきである。

3.上記 2 以外の場合

証券アナリストに求められる役割が、会社との取引や製品の購入を推奨することを目的とするものではなく、証券アナリストとしての専門的能力を活用して当該会社に係わる事実、経営の状況あるいは経営方針などの情報開示に協力するという性格のものである場合には、上記 1.で述べた判断基準からして、発信情報への登場が不適当とは言えないケースもある。ただ、そのような場合でも、担当する会社の発信情報に登場すること自体が、投資家の目には、その証券アナリストが当該会社と特別の関係にあるのではないかと映りやすいから、行うに当たっては投資家本位の立場に立ち、会社との関係で客観性・公正性が疑われないよう細心の注意が求められる。また独立性と客観性を保持しつつ行われなければならないから、報酬を受け取ることは好ましくない。

4.判断に際しての注意事項

基本的な考え方で述べたように、本件については様々なケースがありうるので、 会員は上記に述べたような点を参考にして適切な判断を行うことが期待される。その際、できるだけ客観的な判断が行われるよう、要請を受けた場合は、調査部門の管理者、あるいはコンプライアンス部門を含め第三者の意見を広く求めることが望ましい。

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