プライベートバンカー資格
公共社団法人 日本証券アナリスト協会-The Securities Analysts Association of Japan
Login
マイページ・PB専用ページをお持ちの方はこちら。受験・資格関連情報の閲覧、各種割引の適用などができます。
資格取得で何がどう変わる!?
  • 萩野 琢英 氏  CMA
    ピクテ投信投資顧問 代表取締役社長
  • 荒賀 俊介 氏  CMA、CIIA、シニアPB
    野村證券 所沢支店 ファイナンシャル・コンサルティング課課長
  • 村岡 美香 氏  CMA
    JA共済連 証券運用部 株式投資第2G課長
  • ※ 司会:公益社団法人日本証券アナリスト協会 大澤 静香(教育事業推進部部長)

    ※ 肩書・内容などの情報は収録当時のものです。

     

2017年4月24日

31分38秒

これからのプライベートバンカーに求められるスキルとは

2017年4月8日開催 講師:萩野 琢英 氏

2017年4月24日

20分59秒

資格取得で仕事は確実に面白くなる

2017年4月8日開催 講師:荒賀 俊介 氏

2017年4月24日

44分33秒

“もっと活躍できる自分”を実現する、金融キャリア形成とは

2017年4月8日開催 パネリスト:萩野 琢英 氏、荒賀 俊介 氏、村岡 美香 氏

“もっと活躍できる自分”を実現する、金融キャリア形成とは

『パネルディスカッション』をPDFで見るPDF (551KB)

萩野 琢英 氏  CMA
ピクテ投信投資顧問 代表取締役社長

荒賀 俊介 氏  CMA、CIIA、シニアPB
野村證券 所沢支店 ファイナンシャル・コンサルティング課課長

村岡 美香 氏  CMA
JA共済連 証券運用部 株式投資第2G課長

1. 自身の個人のキャリア形成について、良かった点、改善すべきだった点について

萩 野 私は法学部出身であるが、新しい分野の勉強に対してあまり抵抗がなく、経済の勉強もすっと入っていけた感じだ。良かった点としては、先ほど荒賀さんも言っていたように、勉強したことはすぐ翌日から活用することを心がけた点で、そうすることで知識を体得していけた。また、良きアドバイスを与えてくれる人たちにも恵まれたし、そうした勧めには素直に従ってきた。現在自分が人をマネージする立場となったが、自分のことを一番わかっているのは上司ではないかと今思う。
 改善すべきだった点だが、勉強すべきことを強制的にスケジュールに割り振っておけばよかった。40代に入ってからは、1日のうち2時間程度は強制的にインプットの時間を確保している。こうすることによりインプットのリズムができるが、もっと早いうちから始めていればよかったと思う。

パネルディスカッション

荒 賀 良かった例としては、上場会社担当の時、基本的には自分のコミッションに直結しない部署、例えば人事・総務などに対しても、勉強して得た知識を話したら、「そういうのも、御社でできるの」と、ビジネスチャンスが広がり年金のソリューションを担当する部署につなぐことができた。また、顧客に専門家を同伴した時に、その専門家の力量を判断できるだけの知識が自分についたことがある。さらに、部下の顧客についてもサポートの精度が上がり、約定までの時間を短縮化することができた点だ。改善すべき点としては、基本的には独学でやってきたが、一緒に共有できる仲間がいた方が良かったかなと思う。

村 岡 自分は教育学部出身で経済の素養がなくゼロからのスタートだったが、CMAを目指すという目標が励みになった。会社からは研修面のサポートがあり、同僚と一緒に勉強できて良かったと思う。当時円建債券の運用部署に所属していたため、デリバティブに対しても苦手意識を持たず取り組めた。
 改善点としては、お二人から様々な本の紹介があったが、もっと本を読んでおけばよかったと思う。昨今もシリア情勢など、運用業務に重大な影響を及ぼす状況が勃発しているが、地政学リスクを正しく理解するためには、周辺国の歴史などの背景についても理解が必要だ。現在は外国株式の運用を担当しており、世界中の多くの事象が関係してくる。過去毎月1冊ずつでも読んできていれば、だいぶ違っていた。ある著名エコノミストも、土日のうちどちらかの日を読書に当てていると聞いたことがある。

2. 所属する組織や部下のキャリア形成について心がけていることは

荒 賀 毎朝ミーティングを行っているが、部下に対しては、達成した数字よりもどんな切り口で顧客に当たっているかを聞くようにしている。また、その日の目標は、契約までこぎつけることなのか、それともRMの深堀りなのか、訪問前に明確にするよう指示している。できるだけ短い時間で成果を上げるのがビジネスであり、5年、10年とかかっていては会社が成り立たない。そのためには一人ですべて行う必要はない。ゴールをある程度“見える化”させるように会議を運営している。
 ビジネスは構想が8割だと思っており、勉強も同じだ。ただやみくもに行っても無駄が多く、途中であきらめてしまいがちだ。効率的に働いて早く帰宅できれば、プライベートも充実するし勉強時間も確保できる。業務は時間内に済ませ好循環につなげることが大事であることを、部下に伝えている。

村 岡 3点ある。①部下には成長につながる業務を与えるよう心掛けている。少しだけ背伸びするくらいのレベルの業務に取り組むことが成長につながると考えている。②教えあう職場環境を心がけている。あるセミナーで、上司の役割としては教えること以上に互いに教えあう職場環境作りが大切だということを学んだ。小さな例だが、風通しの良い職場環境を意識し、座席の配置をそれまでのPC端末を隔てて向かい合うレイアウトから、背中合わせに座るレイアウトに変更した。こうすると、振り返るだけでいつでもミーティングができる。③部下には期待していることを伝えるようにしている。自分が課長に昇進する数年前、当時の上司に「課長に昇進した時のお祝いの品は考えてある」と告げられ、驚いた記憶がある。上司が自分に期待してくれることが励みになり、頑張れたので、私も部下に対してなるべく期待を口に出して伝えるように心がけている。CMAを勉強中の若手にも声をかけているが、もしかしたら逆にプレッシャーに感じているかもしれない。ちなみに当時の上司から贈られた昇進祝いは「上司のルール」という本であった。

萩 野 必ず聞くようにしているのがビジョンである。これは怠け者だった自分自身の反省もある。「ビジョン」は達成可能な夢であり、「ドリーム」は達成不可能な夢のことで、例えば南極に行きたいなら「ビジョン」で、火星に行きたいなら「ドリーム」でしかない。5年後、10年後のビジョンを描かせて、それをどう達成していくか具体的に落とし込むことが重要だ。経営を行う立場となった経験から言えば、そこが、人のパッションやエネルギーを引き出してあげるきっかけになり、キャリアプランを作ることになる。
 また、高い目標を立てた方がいい。100点を取りに行けば、70点取れるかもしれないが、始めから50点狙いではそれ以上は望めない。とりあえず高い目標を立て、そこから具体的にビジョンを描いていく。そうしている間に他の才能が開花するかもしれない。一つ言えることは、人は誰しも何らかの才能を持っているので、それを見つけてあげることが、マネージャーの仕事だと思う。
 CMAは難しくて勉強を始めた最初のうちは、一つひとつのつながりが見えないと思う。しかし、ある程度勉強すると、雲の上に出た感覚が得られる。その感覚をいくつ持てるか個人差はあるが、足りない部分を埋めれば雲の上から見えるようになれる。金融だからといって簿記だけではだめで、CMAの勉強過程で、自分に足りないものが見えてくるので、そこを埋めていくことにより自分に自信が持てるようなる。

3. 女性CMAが少ない中、なぜCMAを目指したのか?

パネルディスカッション

村 岡 所属先では女性の運用担当者も多く意識していなかったが、他社の状況を聞き、業界的にはフロントサイドの管理職に女性は少ないことを実感している。CMAを目指したきっかけだが、運用部門配属となりCMAを取得することがスタートだったからだ。先輩職員は皆ストレートで合格していたので、不合格となるわけにはいかないプレッシャーもあった。
 取得してみて、具体的に特定の業務で役に立ったというより、一定のレベルに自分が到達したのだという自信につながったことが大きい。検定会員名簿に名前が掲載されると取引先から早速電話があるなど、関心の高さも感じた。
 女性を元気づけられる話ということで一つ紹介したい。米国個人投資家の投資行動を分析したレポートによると、男性投資家は売買頻度が高く80%、女性投資家の場合は60%未満の回転率という。一般的に長期投資の方がパフォーマンスは高いので、男性投資家よりも女性投資家の方が年間で1%程度パフォーマンスが高いとの内容であった。この結果がそのまま、日本の機関投資家にもあてはまるとは限らないが、女性が金融業界を目指すひとつのきっかけになればいいと思う。男性の方はどうか気を悪くしないで頂きたい。

4. 会場からの質問

①日本人は投資をしないという人が多いが、そういった人を投資に導くには?

萩 野 日本は特殊だ。金利環境では日本も欧州もゼロ金利でほぼ一緒なのに、例えば日本の半分くらいの人口であるイタリアでも、公募投信の残高は250兆円と、80兆円である日本の3倍だ。
 なぜこのような違いがあるかと言えば、一番の理由は日本では過去に投資して成功体験を得られている人が少ないからだと思う。我々運用会社もしっかりとリターンが得られる運用商品を提供していきたい。3年、5年、10年といった単位で、“投資はリターンが上がるもの”という経験をしてもらえば、自ずと増えてくるかと思う。
 確定拠出型年金でも、ポートフォリオはCASH系商品にしている人が多い。投資では、投資期間がどれくらいあるかが重要で、投資期間を長く確保できる若い人ほど大きなリスクがとれるはずだ。毎月定額で購入すれば、相場が下落した局面ではたくさん買えるので、5年、10年経過すればリターンが上がっているはずだ。このように積立投資は着実にリターンを狙える手段ではあるが、長期間を要する。自身のポートフォリオも8-9割グローバル株式と新興国株式を少しずつ購入し、10-20年間でのリターンを狙っている。こうした地道な投資を周知することで、徐々にお金が動いていくのではないかと思う。

②シニアPBのコンピュータ試験に不合格だった。どう勉強したらいいか?

荒 賀 過去問が公開されていないので、テキストの他に私も自分で参考となる本を購入して勉強した。信託も不動産も、勉強したことをまずビジネスで使ってみてはどうか。落とすための試験ではないので、本質をある程度理解できればよく、100点を狙う必要はない。まずはテキスト上下巻でしっかり勉強し、わからないところは他の本で勉強したり、金融機関にお勤めの方なら関連部署に話を聞いたりしてみてはどうか。それでもどうしてもわからない箇所は切り捨てて他の分野で挽回するという手段もある。

③プログラマーであり、金融には全くの素人であるが、CMAやPB資格を取得すれば、金融に関わる仕事をすることができるようなるか?

村 岡 CMAを取得すれば、金融に関わる仕事に携わるチャンスは確実に高まると思う。CMAの取得は、その人が一定の知識レベルに達している免許証のようなものである。決してそれ自体がゴールとはならないが、品質保証のようなものとなるので、まずは目指して頂きたいと思う。

④皆さんの業務にはAIが今後どのように関わってくるか?

萩 野 確実に関わってくる。当社ではワトソンを導入するかどうか検討しているが、簡単なルーティーン業務はこなすし、目論見書の作成や、音声自動対応、各種データ収集もAIでできるようになる。5年、10年たったら激変しているはずだ。特に若い人はAIを勉強しておいた方がいい。今後のヒエラルキーは逆ピラミッドになり、従来とは異なるスキルセットを持った人材が労働市場に入ってくる。一方でこれらに対抗できるのは、高度なファイナンシャルアドバイザリー(FA)だ。人間にはヒューマンタッチが必要で、高度化されたFAができる人間は確実に必要。AIとFA、この2つに2極化していくと思われる。

荒 賀 「エクス・マキナ」という映画がある。Googleを思わせる検索エンジン開発IT企業「ブルーブック」がAIの研究開発をする話であるが、GoogleやAppleがどんな考えを持っているかの参考となるので、レンタルビデオ店で借りて見て頂ければと思う。車も自動運転化が進むと、IT技術をもっている会社の傘下にメーカーが入る時代がくる。あるいはポケモンGoでもわかるように、従来のゲーム会社はハードとソフトの2つで売上を確保していたが、今はスマホさえあれば無料でアプリをダウンロードすればよく、ゲームのハードもソフトも要らない。IT技術をもつ傘下にゲーム会社が入ることになる。またAI時代に入ると、今までの仕事の49%は代替できると言われており、米国がそのうちの75%のコンテンツを取っている。金融も付加価値を生まない仕事は置き換わり、ブローカレッジなど機械的な作業の仕事は殆どなくなるだろう。なくならない仕事の一番はセラピストであり、我々のようなRMも、もしかするとセラピストの一種かもしれないので残ると思う。付加価値を高めるための勉強は自分のためでもあるが、世のため、人のためでもある。

村 岡 最近はAIの話を聞かない日はないくらいだ。個人向けのAIファンドも増えているし、保険会社の引受等でもAIが活用されていると聞く。最近では日銀の金融政策についてもAI予想が出てきている。ただ2人が言われた通り、人間しかできないところは絶対になくならないと思う。メンター的な役割も機械ではできない部分であり、残された部分でいかに活躍できるかを考えていかなければならない。

⑤シニアPBの筆記試験の勉強方法を教えてほしい

荒 賀 自分が受験した時の設問は造り酒屋のケースであったが、以前そういった業種を担当していた。どういう切り口で提案すべきかは、当時オーナーがどういうことを考えていたか、その時の経験とダブった。金融機関の人間は基本的には自分が稼げるFeeしか興味がない傾向にあるが、それを選択しないのも、選択肢の一つだ。提案すべき解決策の選択肢を広げて、最終的には金融機関として儲からないような提案を、その時は最終結論として提出したと思う。税金対策や事業承継対策など、いくつかポイントはあると思うが、何パターンか考えて、実際のお客様に例えばこういう提案があったらどうですかと聞いてみて、現実的であるかどうかを測ってみてもいいかもしれない。

5. 会場のみなさんへのメッセージ

パネルディスカッション

萩 野 ロンドン・ビジネススクール教授リンダ・グラットンの「LIFE SHIFT」という本があるが、読むと自分の人生観が変わると思う。バイオテクノロジーなどの影響で2年間で1年ずつ平均寿命が伸びているそうで、私は50代だが95歳くらいまで寿命が伸びるらしいし、私の娘は大学生であるが、彼女が110歳まで生きる確率は80%だそうだ。その時どういう人生プランを立てていくのかという内容だ。今までは20歳くらいまでは勉強して、65歳くらいまで働き、あとは年金生活に入るというサイクルであったが、人生3回勉強しなければならなくなる。共働きはお互いサポートしながら、どちらかが勉強する時期はどちらかが働くといったことが紹介されていて、その本を読んでやる気が出た。20代、30代で勉強し、40代は怠けていたがそれまでの蓄積があった。50代に入り、もう一回いろんな書物を読んでみたが、過去にはなかった様々な新説が出てきていることがわかって、自分をアップデートできた。一度会社を辞めて、今2、3年くらい勉強した方がいいのではないかと思った。もしかしたら80、90歳までビジネスに貢献していかなければならない時代に入ってきているかもしれないので、学ぶということはとても重要であることを、最後のメッセージとしたい。

荒 賀 2つあり、一つは勉強することで、顧客が知りたがっている内容を、こういうことですよ、と簡単に伝えらえるようになる。トマ・ピケティの『21世紀の資本』が先ごろ話題となったが、あくまで自己流の解釈ではあるが、「賃金の伸び率よりも有価証券等の収益率の方が高いので、要はお金持ちはさらにお金持ちになるという内容ですよ」、と5秒くらいで伝えられる。2つ目だが、現在世界で時価総額30位の中には、日本企業は一つも入っていない。日本はこれからどんどん人口が少なくなる中で、シンガポールのように金融部門の付加価値を高めることは重要なのではないか。そのためにも、自分、クライアント、そして国のため、自分の付加価値を高める努力を続けて頂きたい。

村 岡 荒賀さんも言っているように、CMAは勉強すれば取得できる資格だ。働きながらの勉強は大変だが、取得できた時の達成感も大きいので、ぜひ頑張って頂きたい。また私も「LIFE SHIFT」の本には感銘を受けた。知識の更新はいくつになっても大事なことだと思う。以前リスク管理部門にいた時は、リスク量を計測する際に金利の下限はゼロとしてシミュレーションをしていたが、今やマイナス金利である。昔はインプットは35歳までという話を聞いたことがあるが、今や70歳、80歳になっても知識のインプットが必要な時代だ。最後に女性CMAが増えてほしい。個別企業の分析においても、消費者の半分は女性であることを思えば、女性の視点が生かせる余地は大きいと思う。男性はもちろん女性にもチャレンジを期待している。

  • facebook
  • twitter
  • YouTube
検索キーワード:
© 2015 The Securities Analysts Association of Japan.
当ウェブサイト内の文章・画像等の無断転載及び複製等の行為はご遠慮ください。