米国のミューチュアル・ファンドにおける 不正取引等を巡る問題-手数料を巡る問題-
不正取引が発覚し大きな問題になった一方で、手数料を巡る問題も、ミューチュアル・ファンドを巡る議論の焦点の一つとなった。第一に、多くのミューチュアル・ファンドが一定の条件を満たした場合、購入者に対し、販売に際しての手数料を割り引く制度を採用しているにもかかわらず、条件を満たす多数の投資家がそれを受けられなかったということが、SEC、NASDの調査により明らかになった。その第一次的責任はファンドの販売を行った証券会社にあった。しかし、当局は、割引の基準が必ずしも明確でなく、また割引制度の存在を十分に投資家に周知していなかった点についてはミューチュアル・ファンド業界も責任があるとしている。
第二の問題は、投資顧問会社が、証券会社に、自社のファンドを優先的に販売してもらうため支払っているインセンティブに関するものである。このような支払いは、キャッシュで行われる場合もあるが、指定委託売買(directed brokerage)という形で行われる場合が多い。すなわち、自社のファンドを優先的に販売してもらうために、ファンドのポートフォリオ運用のための証券の売買を特定の証券会社に発注し、そこに手数料を落とすというものである。このようなインセンティブの支払いは、開示が行われていれば合法的とされてきた。
こうしたインセンティブの支払いについては、二つの面から問題が指摘されている。まず、インセンティブを受け取る仕組みがあることにより、ブローカーは顧客にとって必ずしも最適でないファンドを推奨する危険があるということである。これまでは顧客にこのようなインセンティブの存在につき開示することにより、顧客自身の判断に任せるという考え方が取られてきたわけであるが、多くの場合、開示内容は不十分であいまいだったという批判も出ている。
また、売買委託手数料の形を取る場合、それは顧客資産から支払われることになるが、このようなマーケッティングの費用は顧客資産が負担すべきではないという批判がある。