英国における証券アナリストの利益相反問題-FSAによるコンサルテーション・ペーパー 171の公表(2003年2月)-

2003年2月にFSAが公表したコンサルテーション・ペーパー 171「利益相反:投資調査と証券発行(Conflicts of Interest:Investment Research and Issues of Securities)」によると、ディスカッション・ペーパー 15に対し寄せられた意見の大半は、投資銀行部門を有する証券会社のアナリストについては投資銀行業務との関係で利益相反が内在し、リサーチの客観性を損なっている可能性があることを認めるものであり、これら意見から次のような点が明らかにされたとしている。

a 高度の基準(業務原則等)を有する現行規制体系は利益相反問題に対しても適切な枠組みを提供していると言えるが、現行の枠組みの中で利益相反を防止するための更に明確なガイダンスを示すことが必要であること。

b 追加的なガイダンスは、英国市場と米国市場との差異に配慮する一方で、米国およびEUで導入されつつある規制と可能な限り整合性を保つべきであること。

c 機関投資家向けの各種リサーチが第三者により要約あるいは編集され、メディア、インターネットを通じてリテール市場に流れているが、個人(リテール)投資家の多くは投資推奨の背後にある利益相反の存在に気付いていないため、個人投資家にもこの問題を周知させる必要があること。

また、同ペーパー 171において、FSAは、米国で顕在化した証券会社によるIPO株割り当ての濫用問題に対応して、英国の証券会社の投資銀行部門でも米国におけると同様の問題が存在するのかどうか調査を行い、その結果、類似の弊害があり得るとして新たにガイダンスを設ける必要性を認識するに至ったとしている。
同ペーパー171は、寄せられた意見および調査結果に基づき、投資リサーチ、企業金融業務の利益相反問題に関して会社が遵守すべき基準を明確化するFSAの業務行為規約(Conduct of Business)改正案(大部分がガイダンス、一部規則を含む)を提示し、2003年5月12日を期限としてパブリック・コメントを求めた。FSAは、会社および会社の監督責任者が利益相反を適切に管理、統制するための社内体制を構築することが肝要であるとし、ガイダンス案では、会社が採用すべき方策に関する基準を示すことが主眼とされた。なお、FSAによる規制体系下では「ガイダンス」には会社に対する拘束力はない。

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