プライベートバンカー資格
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完全実習化したPBセミナー

大澤 PBセミナーでの方式としては、従来は1日目が講義で2日目がケーススタディーだったが、3年前からはケーススタディーに基づくロールプレーイングという完全実習方式に変更した。

米田 これは事務局のアイデアか。

北山 雅一 氏 CMA

大澤 私の発案だ。というのも、毎回セミナー参加者のアンケートを見ているが、「講義の時間がもったいない」という意見があり、確かに先生方からじかに指導を受けられる方が価値はあるので、思い切って講義をなくして完全実習にしたらどうかと考えた。ただ先生方の負担が大きくなるので、果たして受けていただけるか不安だったが、ご協力の下、この方式で3年目となる。

北山 最大のポイントは、ケースが面白いかどうかである。参加者の人たちが本当の話だと思って、取り組んでくれるかどうかだ。例年、受講者からは、このケースはどこの話ですかと聞かれる。それこそ皆さん、プライベートバンカーのプロフェッショナルで、各社のナンバーワンが参加しているので、それくらいのリアリティーは必要だ。

米田 限りなくリアルに近いフィクションだ。

前原 それとやはりロールプレーイングかと思う。米田先生に社長役を務めていただき、ご本人には相当ストレスがたまったと思うが、リアリティーを付加する重要なファクターだった。人の話を消化するよりも、自分がそこに身を置いて他業種の参加者と一緒になって考えることで、得るものは確実に大きい。

北山 現実の会社の中では、チームで一つのお客さまに対して本気で取り組むという関係が少ないからだろう。作られたチームだけど本気でやれよ、でないと、このセミナーは乗り切れないな、という気持ちで皆さん参加している。

前原 グループで3~5チームに分かれてプレゼンテーションを競う方法も、闘争心が燃えてよかったかなと思う。また他の人のプレゼンテーションを見ると、気付くことも多い。
 米田先生はプレゼンテーションを受け、それに対してオーナーらしい受け答えをしながら、その場で留意すべきポイントにも言及される。それらしい雰囲気を出すことが重要で米田先生の演技力には感心している。今後もぜひお願いしたい。

米田 今の形式となって3回実施したが、大きなポイントは受講生自身が主体になったことだ。リアルに近い優れたケースを題材に主体的に取り組んだことで、結果として参加者のアンケートで3年間連続満足度100%という高い評価に結び付いたのだと思う。自分で頭を動かした時、本当に面白いと思うし、見えてくるものがある。

前原 北山先生にいいネタを提供いただいているからこそ参加者も一生懸命頑張るということもあり、いいコンビネーションだ。北山先生がおっしゃった通り、現実的なフィクションとして本気で取り組む気持ちが生まれたのだと思う。

米田 プレゼンテーションでは北山先生もしくは私が直後にフィードバックする。これが効果が高い。私は心理学の研究活動の一環として『究極の鍛錬(原題Talent is overrated)』という本を翻訳した。この本では多くの分野で活躍する達人たちに共通する鍛錬方法をdeliberate practice(意図的訓練)として明らかにしており、その意図的訓練の一つに、訓練直後のフィードバックを提供することの重要性が挙げられている。また課題のレベルを徐々に上げていき、ウェイトトレーニングでいえば7回、9回で途切れることなく10回目を第三者の支持を得ながら上げるような、常にラーニングスゾーンにいる状況でのトレーニング効果が高い。

前原 双方向の働きかけがあるのがいい。それがないと自分が関与する部分がなくなってしまう。

米田 北山先生も私も、実務では様々なオーナー経営者と頻繁に会っているので、あのオーナー経営者はこんなことを言いそうだなということを頭に思い浮かべながら話をしている。私が話しているのではなく、私がイメージしているオーナー社長に話をさせているだけである。

前原 そこにリアリティーを付加する良さがある。

米田 私のままで話したら面白くない。そこにフィクション性があるからこそ限りなく現実に近いという感じになる。パラドックスであるが。

最後に残る、コミュニケーション力

北山 最近売れている本として、もう一つは『ハード・シングス(原題The Hard Thing about Hard Things)』というネットスケープ社上場にも携わったベンチャーキャピタリストであるホロウィッツの本がある。経営する中で難しいのはコミュニケーションだという話で、ほめるのは易しいが、けなしてどうしてお前はだめなのかを納得させるかや、働かない社員をどう働かせるかなど、自社に不要な人材をどう切るかがハード・シングスだと言っている。こうしたことの方が、ビジネスモデルの構築よりも数段難しく、それこそ効率的市場仮説でもなく、合理的な投資家でもなく、全く違う次元のところで経営者は苦労するという話だ。
 だからPBセミナーのケーススタディーでも、ビジネスプランやビジネスモデルといった本流とは異なる留意点を必ず入れている。例えば後継者が愚かでどうしようもないとか、弟の反対とか、そういう人間関係的な苦労を乗り越えて初めて会社が成り立つ。PB/WMは、そういうことにぶち当たる。

大澤 毎月、プライベートバンカー資格を取得した人にインタビューしているが、何が良かったかと聞くと、必ずその話が出て来る。お客さまとよくよくコミュニケーションを取ってみると、事業がうまくいかない本当の理由は、家族関係とか、心理的な部分に要因があることをくみ取れるようになったという感想をいただいたりしている。

北山 プライベートバンカーの三つのCのうち、コンサルタントの部分は確実にAIに置き換わってくると思う。しかしコーチであって、カウンセラーであれというのは、なかなか置き換われない。特にPB/WMとしては、三つの中で今後重視すべきはこの二つのCだ。

米田 最近「精神対話士」という職種に興味を持っている。会話は「意味情報の交換」であるが、対話は「感情情報の交換だ」。共感に基づく感情情報の交換こそ、深い会話につながり、経営者の心を開かせるために有効ではないかと思う。少し整理できた段階で、「精神対話士に学ぶ富裕層コミュニケーション」といったPB補完セミナーを開催したいと思っている。

大澤 お待ちしている。アナリスト協会といえども、数理的な分析スキルだけではなく、AIに置き換わらない精神的なものをくみ取るスキルなども、今後は教育の対象となるのだろうか。

北山 テクニカルアナリスト協会もフィンテックの世界だが、置き換えられないものがあることを明確に認識し、臨床心理学博士が米国テクニカルアナリスト向けにセミナーを開催している。

米田 いずれにせよ、PBセミナーでのケーススタディーでは、まさにその心理も含めて演習している。型の練習を終わって、乱取りを行って、直後にフィードバックを受けるという流れだ。科学的にみても学習的効果の高い手法だ。
 先ほど紹介した「究極の鍛錬」では、体系的なプログラム、直後のフィードバック、徐々に負荷の高まる課題挑戦へとメンターが導くことという一連の流れを持つ鍛錬方法がモデル化されている。思えば協会がまさにこの10年間のPBセミナーで実施してきたことだ。
 

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