プライベートバンカー資格
公共社団法人 日本証券アナリスト協会-The Securities Analysts Association of Japan
Login
マイページ・PB専用ページをお持ちの方はこちら。受験・資格関連情報の閲覧、各種割引の適用などができます。

これからのPB/WM教育とは

大澤 CMAにとってもPB/WM分野を身に付けることで活躍の分野が広がるという狙いから、協会はPB教育プログラムを作ったと聞いているが、これからのPB/WM教育について、先生方や専務理事のご意見を伺いたい。

前原 金融業界や金融サービスは、確実に変わってきている。貯蓄から投資へ、貯蓄から資産形成へという言葉で代表されているが、行政の認識、お客さま側のニーズ、かつ金融業界もそうした方向に向かってきている。
 PB/WM分野のニーズは、決して低まらず、どんどん高まっていくと今の話を聞いて強く感じたところだ。それに加えて投資信託、生命保険の販売手数料等の問題など、アカウンタビリティーやビジネスモデルをこれから変えていかなければいけないという認識も高まっていくだろう。
 経営的な観点からも、やはりPB/WM的な思想、あるいは視点が必要になってきている。更に北山先生のおっしゃっているフィンテック、米田先生がおっしゃっているサービスの多様化、プロダクトスペシャリストではなくスーパージェネラリストが求められるのだろうというご意見を考えると、これからPB/WMの将来は決して暗くはない。明るい方向に進んでいくかと思うが、手放しで喜んでいるわけにもいかないので、大きなうねりに取り組んでいくことを課題として、協会としては受け止めていきたい。そのためには、前例にとらわれることなく、しかし前例を生かしつつ様々な試みを進めていけば、もっと大きな力になっていくだろうと思っている。
 実際にはわれわれがヒアリングに伺うと、地域の金融機関では一年前と比べても随分関心が変わってきていることを肌で感じている。

北山 投資信託・ファンドラップ・終身保険・個人年金保険等の金融商品は部品であり、その部品の組合わせは、おそらくフィンテックで置き換わる。それこそ、非金融機関が金融業務を行うというのが、もともとのフィンテックであると思う。
 そうなると金融機関は、独自の差別化や特異性がないと生き残っていけないと思う。ベビーブーマーの相続が始まり資金が都心部に移るなどの資金循環を考えると、勝てる金融機関と負ける金融機関がこれから明確になってくる。商品の選択以外の戦略ストーリーが作れる人材を育成しないといけない。だから、ますます金融機関ではPB/WMの必要性が高まってくると思う。もしかすると、金融機関はこの分野でしかやっていけないかもしれない。それ以外のリテールの部分は、非金融機関に置き換わってくる可能性があるというのが今のフィンテックの世界。過激に聞こえるが、比較的実現可能性の高い話だと思う。

米田 CMAというのは、プライベートバンカーとして基礎的な枠組みとなると思う。特にPBの中核的な顧客はファミリービジネスのオーナーであり、法人・個人を一体的に捉えないと顧客課題の本質を見抜くことができない。法人が置かれている事業環境がどのように変わってきているのか、そしてそれに対応し個人のポートフォリオもどうするべきか。しっかりと努力すれば、ここを体系的に学ぶことは誰でもできると思う。
 ただ、プライベートバンカーとしての実践力をつけるという意味では、まさにPBセミナーが実施しているような、かなり実践型の研修で自分自身の実務を振り返る「リフレクション(振り返り)」の提案が重要となる。リフレクションする場として用い、自分の今行っている活動が、業界の水準ではどうなのか専門家から実践的なフィードバックを受けることは、とてもよいことだと思う。
 また上級のシニア・プライベートバンカーに認定されるということは、個人のブランドの客観的な証明であり、資格の持つ役割は高いと思う。現状、筆記試験では受験者の2割程しか試験に受からず、私自身試験委員の一人として、合否を迷ったら落とすという厳格さが、ある意味この資格のブランド力となっている。
 

VUCAの世界

米田 最後に申し上げたいが、時代が大きく変化してきている。ビジネスの分析に、VUCA(Volatility、Uncertainty、Complexity、Ambiguity)世界というものがあり、この共通要素は、Not clear(先が見通せない)だ。VUCA世界の中で問われるのは深い教養、つまりメガトレンドを読む力が今求められている。
 例えば不動産というポートフォリオを考える場合に、2060年には国連のデータによると日本の人口は8,400万人になるとか、65歳以上の人口構成比が40%となるメガトレンドの中で考える。この不動産は外国人が買うだろうか、REITが買うだろうか、ノンリコースファイナンスが付くのだろうか、こうした3点のチェックにどれも引っかからないなら、資産として不動産は相当劣化する可能性があるかもしれないと考えるのが、メガトレンドの中で当然出てくる議論ではないか。CPIや金利等短期市場情報だけを考えていると、メガトレンドが見えてこない。スーパージェネラリストを目指すプライベートバンカーなら、中長期の資産形成のアドバイザーとして顧客の頼りになる存在となるためにも、深い教養が必要と思う。

北山 VUCAとはどのような分野の言葉か?

米田 米国の軍事用語として起源を持つ。欧米のビジネススクールで現在の経営課題の不透明性を語る際に用いられているキーワードの一つである。すなわち、Volatility(変動が大きいこと)状況は刻々変動し、Uncertainty(不確実さ)AかBかどちらか分からない、Complexity(複雑さ)分析の対象となる状況は相当複雑で、Ambiguity(曖昧さ)は解釈には複数の余地があり一つの解釈ではない。これらの共通要素で言うとNot clear(先が見通せない)。そういう中で敏速に行動し、自らは生き延び、存在していかなければいけない。
 答えは、小さな実験を迅速に繰り返し、学んで変容し続けていくこと。生涯学習ができる自分を作ることが大切だ。大学教育に携わっている私としては、単に知識を教えるのではなくて、体系化された知識や考え方を説き、メガトレンドを読める力を持つようにと、若い世代に伝えている。
 

成功するが非常識な経営者に寄り添うPB/WM

北山 バランス感覚がいい経営者というのは、恐らくはそれほど成功しない。ものすごいスペシャリティーを持っているけれども、それ以外に関しては全くの無知といった方が、経営すると成功する可能性が高い。常識にとらわれていると差別化が図れないからだ。
 しかし長い時間軸の中で経営していくなら、常識の範囲で行動するサポート役は必要である。それが多分、プライベートバンカーやウェルスマネジャーとなる。経営者として平均的な人間ばかりを作るのではなく、非常識だけれどもビジネスでは必要なコンセプトを10~20年も続けていれば日本のためになるから、非常識さをそのまま置いておける環境は維持しないといけない。それを周りから支えるために、プライベートバンカー、ウェルスマネジャーのような存在が必要だと思う。金融と事業に関わるビジネススクール的な教育を、アナリスト協会のPB/WMのセミナーの中で提供できればいいと思う。

北山 雅一 氏 CMA

米田 事業については、やはり先鋭的な経営者でないといけない。だから事業経営では非常識でいい。しかし自分が稼いだお金を保全する必要がどうしてもある。いざというときの備えや、次世代への承継問題ではバランス感覚が際立って重要となる。経営で手一杯の経営者は結果として運用も分からない、そもそもその時間がない。こうした経営者にこそ、プライベートバンカーが必要だという、まさに正鵠を射た話だと思う。私はそれが自分の仕事だと思っている。

北山 ファイナンスは大学やビジネススクールよりも、むしろアナリスト協会でPB/WMで展開する教育の方がふさわしいのではないか。今言われた利己的な経営者や、それをどう周りから包み込むかという受容の精神や深い教養や専門性があるPB/WM、両者のバランスをアナリスト協会が教育で提供できればよいと思う。

米田 利己的な経営者でも、相性の合うことからお客さまになっていただいた方々を、われわれはその良い面も悪い面も含め受容しており、またそうでなくてはならない。この年齢になると誰と時間を過ごすかということが人生の重要な価値そのものになっている。誰を顧客にするのかは自分の人生そのものという覚悟が、プライベートバンカーには必要だ。

大澤 CMAが今やアナリスト業務の人だけのものではないように、PB/WMスキルもいずれは広く金融関係者に必要なスキルとして認識される日がくることを願う。

前原 本日の先生方の貴重なご意見を基に、今後、協会が担うべき人材教育を考えていきたい。

北山 チャレンジングな発言が多かった座談会だったと思う。

  • facebook
  • twitter
  • YouTube
検索キーワード:
© 2015 The Securities Analysts Association of Japan.