第1 はじめに

近年、わが国では間接金融から直接金融へのシフトという大きな流れが定着しつつある中で、専門的な分析能力を用いて投資価値判断を行う証券アナリストに対する社会の期待と需要が高まっており、当協会の会員数も増加を続け、またその活動範囲も広がってきている。その一方で 2000 年から 2001 年にかけて海外でも、また 国内でも証券アナリストを巡って様々な動きが出ている。2000 年 10 月、米国では SECが証券アナリストをはじめとする投資専門家と一般投資家に公平に企業の情報が提供されるようにすることを目指して、レギュレーションFD を施行した。また、2001 年夏、米国では投資家、マスメディア、議会、SEC などの関係者による証券アナリスト批判の動きが強まり、これに対応して SIA(証券業協会)や証券アナリストの団体である AIMR 等の関係団体が対応策を打ち出している。なお、証券監督者の国際機構である IOSCO も証券アナリストの問題を検討するプロジェクトチームを発足させている。

米国とわが国では証券アナリストの業務およびそれを巡る状況が同一というわけではなく、米国での状況がそのままわが国に当てはまるわけではない。しかしながら、資本市場のグローバル化に伴い、世界の資本市場が同質性を高めつつあることを考えると、米国の動きを対岸の火事とみることはできない。わが国においても米国の動きなどをきっかけにマスメディアを含む多くの関係者が証券アナリストの問題を取り上げるようになっており、その中には批判的論調も見られる。これは職業的専門家としての証券アナリストに対する社会的認知度が高まったことに比例して、その業務に対する投資家をはじめとする社会の要請が厳しさを増していることも反映していると見られる。証券アナリストとして、このような状況を踏まえ職業倫理のあり方につきあらためて深く考えていく必要があると言えよう。

以上の状況を考慮し、当協会は、2001 年の夏以来、今後の証券アナリストの職業倫理のあり方について検討を行ってきた。この間、証券アナリストの業務とそれを巡る環境を調査するため、個人会員へのアンケートならびに多数の証券会社、運用会社および事業会社などからのヒアリングを行った。この結果も参考にしながら検討を進め、別添のように当協会としての見解をまとめた。なお、本ペーパーでは、一部の問題を除き、主としてセル・サイドの証券アナリストに係る問題を検討しているが、今後必要に応じバイ・サイドの証券アナリストに係る問題についても、当協会として検討を行っていくこととしたい。

当協会の検討と時期を同じくして、日本証券業協会においても証券会社における調査部門のあり方を検討するためのワーキンググループが設置され検討が行われてきたが、その結果を踏まえ平成 14年1月25 日に理事会決議(アナリスト・レポートの取扱い等について)が行われた(平成15年1月15日一部改正)。これは当協会としても高く評価するところであり、本ペーパーでもその決議の内容について適宜言及した。

本ペーパーが証券アナリストの職業倫理の向上につながり、証券アナリストが資本市場における重要な担い手としてさらに専門職能を発揮していくことに資することができれば幸いである。

本ペーパーで言及している日本証券業協会理事会決議「アナリスト・レポートの取扱い等について」は、同協会自主規制規則「アナリスト・レポートの取扱い等に関する規則」に改正されています。また、言及している条文の内容や項目が、改正等により変更になっていることもあります。留意してください。

Get ADOBE READER

※PDFファイルをご利用いただくには、Adobe社 Acrobat Reader(無償)が必要です。最新のバージョンをお持ちでない方は左のバナーをクリックしてダウンロード後、インストールを行ってください。

CMA資格
プライベートバンカー資格
専門性を高める
金融・資本市場への情報発信
協会について

公益社団法人日本証券アナリスト協会は「ASIF(アジア証券・投資アナリスト連合会)」「ACIIA(国際公認投資アナリスト協会)」のメンバーです。
「CMA」「日本証券アナリスト協会認定アナリスト」「Certified Member Analyst of the Securities Analysts Association of Japan」は、公益社団法人日本証券アナリスト協会の登録商標です。

ページ先頭へ戻る

© 2015 The Securities Analysts Association of Japan.
当ウェブサイト内の文章・画像等の無断転載及び複製等の行為はご遠慮ください。