1. 職業行為基準上の留意事項

職業行為基準のうち、表現・表記に特に関係の深い規定とこれにかかわる留意事項は次のとおりである。

(1) 綿密な調査・分析に基づく合理的かつ十分な根拠を持つこと (基準 3.(1)イ(イ))

これは、アナリスト・レポートの内容自体について求められる要件であるが、「合理的かつ十分な根拠を持つこと」は、レポートの表現においても留意が必要である。

(2) 事実と意見を明確に区別すること (同 3.(1)イ(ロ))

アナリスト・レポートには、客観的な事実の分析だけでなく、証券アナリストの意見、判断が当然含まれることとなるが、この事実と意見との区別があいまいなまま顧客に伝えられる場合には、顧客の判断をミスリードする恐れがある。そのため、両者の明確な区別が必要とされるのである。

(3) 重要な事実についてすべて正確に表示すること (同 3.(1)イ(ハ))

アナリスト・レポートには、重要な事実、すなわち顧客の投資判断に重要な影響を及ぼすと考えられる事実をすべて正確に表示しなければならない。これは証券取引法第157 条(注)と同趣旨という点でも重視される。

さらにこの関係で強調したいのは、不注意による事実関係の誤りを防止することの重要性である。事実の正確性の確保は証券分析業務の基本であり、投資家に誤った判断をさせないためにも不可欠なことである。最近では、発行会社の IR 部門が、自社に関するレポートをフォローすることを重要な業務としている。それだけに、数字や事実関係の記載内容は厳しく検証されている。このような状況で事実関係の誤りがあると、発行会社からも強い不信を招く原因にもなりかねない。誤りをなくしていくためには、個々の証券アナリストができる限りの注意を払うことがまずは基本となるが、 同時にチェックのための体制が組織として確立されていることも必須である。この点については、法人会員にも適切な措置を講じることを要望したい。

(注)証券取引法第 157 条
何人も、次に掲げる行為をしてはならない。
二 有価証券の売買その他の取引又は有価証券指数等先物取引等、有価証券オプション取引等、外国市場証券先物取引等若しくは有価証券店頭デリバティブ取引等について、重要な事項について虚偽の表示があり、又は誤解を生じさせないために必要な重要な事実の表示が欠けている文書その他の表示を使用して金銭その他の財産を取得すること

(4) 投資成果を保証するような表現を用いないこと(同 3.(1)イ(ニ))

アナリスト・レポートにおいて、一定の利益を確実に保証するような表現を用いてはならない。有価証券という価格変動のリスクのある投資対象は、必ずしも予期した成果が得られないことは投資家も承知しているはずであるが、一定の投資成果を確実に保証するかのような表現を取ったため、後で顧客との間でトラブルを生じる場合があり得るのが現実であり、格段の注意が必要である。

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