図書紹介

中小企業決算の透明性と信頼性
―改善に向けた実証・理論・実務研究-

越智信仁 編著 (同文館)

 中小企業と金融機関の良好な関係を維持・強化し、円滑な中小企業金融を進めるためには、非上場中小企業の決算開示の透明性と信頼性を向上させることが求められている。しかし、これまで非上場中小企業の決算書の信頼性については、定量的・学術的な研究が十分に行われていなかった。本書は、会計学や会社法の研究者、税理士、公認会計士などの実務家が中心となり、中小企業会計学会内で共同研究した成果を取りまとめたものである。

 第Ⅰ部では、中小企業では会社法が要求している決算公告等による公開がほとんど行われていない実態を指摘するとともに、外国における登記所における公開やIAASB(国際監査・保証基準審議会)での議論が紹介されている。

 本書で注目される点は、第Ⅱ部で非上場中小企業の決算書の主たる利害関係者である金融機関等に質問票調査を実施した結果、中小企業会計要領等の会計基準の準拠によって信頼性が高まることが明らかになったことである。また、税理士の期中関与(月次決算・経理指導等)が行われている場合にも信頼性の向上が定量的に確認できている。これらは、今後第三者保証の立法的・制度的建付けの検討を進める際には参考になると考えられる。

 第Ⅲ部では、規模の小さい中小企業においてITによる会計情報の透明性・信頼性向上の可能性があることを検討しているほか、税務申告における書面添付制度の活用により、特に金融機関に対して決算書への信頼性を高める効果も指摘している。

 編著者の越智信仁氏は、関東学院大学経営学部教授、税理士。

 

目次

序 章 本書の目的・方法と構成
第Ⅰ部 中小企業決算を取り巻く諸制度
 第1章 中小会社の会計とその保証をめぐる会社法上の諸問題
 第2章 会社法監査の義務付け範囲と
    IAASBの「複雑性の低い事業体の監査」プロジェクト
 第3章 中小企業会計の制度的特徴
 第4章 書面添付制度の利用状況と普及への課題
第Ⅱ部 決算開示の信頼性を巡る実証と理論
 第5章 中小企業決算開示の信頼性等に関する質問票調査
 第6章 税務会計論等からの考察
 第7章 内部監査の視点からみた税理士の期中関与による決算書の信頼性向上効果
 第8章 財務諸表の信頼性確保における専門家業務の位置づけ
第Ⅲ部 中小企業決算・税理士実務と海外事例
 第9章 DXによる透明性・信頼性への貢献可能性
 第10章 書面添付制度の実務的課題と活用の方策
 第11章 諸外国における監査以外の中小企業の会計情報の信頼性確保策
 終 章 総括と今後の課題

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