図書紹介
株式報酬をめぐるトラブルの予防・解決の実務Q&A
ストック・オプション リストリクテッド・ストック パフォーマンス・シェア
岩崎隼人 著 (日本法令)
上場企業やスタートアップ企業をはじめ多くの会社において、自社の役職員等へ現金に代わる、またはそれに上乗せする報酬として、株式やストック・オプションなどを付与する例が増えている。株式報酬は会社の業績次第で大幅なアップが見込めることから、効果的にインセンティブ付けができると考えられている。これらを正しく設計し、運用管理することで、会社を成長させるためのエンジンとして機能するはずである。
しかし、著者によると、「創業当初に自前でストック・オプションを付与した」、「アドバイザーに言われるままに発行したが、内容を十分に理解していなかった」、「発行後の運用管理を十分にできていない」といった悩みの声が聞かれるという。また、実際に株主や従業員から損害賠償を請求される事例もある。
本書は、税制適格ストック・オプションとするための要件、有償ストック・オプションの設計、従来広く採用されてきた信託型ストック・オプション、株式を付与する際に処分禁止、地位条件、権利制限などの条項を設けるリストリクテッド・ストック、さらに業績条件を付加するパフォーマンス・シェアなどを幅広く取り上げている。そして著者が上場企業やスタートアップ企業に対して株式報酬の設計や管理・運用の法務をサポートしてきた経験を基に、Q&A形式でトラブルの事例やその予防方法、解決方法を中心に注意すべき事項を解説している点に特徴がある。
また、令和6(2024)年度税制改正で税制適格ストック・オプションの要件が緩和され、株式の保管委託要件の一部撤廃、社外高度人材への付与要件の緩和、年間行使価額の限度額引上げなど今後大きな影響をもたらす点も踏まえている。併せて、2023年5月に開示された信託型ストック・オプションに関する国税庁の見解にも触れている。
著者の岩崎隼人氏は、岩崎総合法律事務所代表弁護士。シニア・プライベートバンカー。
目次
第1章 基礎概念
第1 株式報酬全体の概観
第2 ストック・オプション
第3 リストリクテッド・ストックとパフォーマンス・シェア
第2章 設計段階・発行前段階の注意点
第1 ストック・オプション全体
第2 税制適格ストック・オプション
第3 有償ストック・オプション
第4 信託型ストック・オプション
第5 リストリクテッド・ストックとパフォーマンス・シェア
第6 従業員採用活動での利用のリスク
第7 その他株式報酬制度全体に関するもの
第3章 運用・管理段階での注意点
第1 価値の認識・解釈のトラブル
第2 付与した報酬を没収・取り除くことの問題
第3 報酬の内容を変更することの問題
第4 報酬の管理ミスを巡る問題
第5 価値が減殺される場面の問題
第6 役員の任務懈怠責任(善管注意義務違反)の問題
第7 株式報酬の譲渡・承継に関する問題