図書紹介
実務で役立つ「企業価値評価」がわかる本
小島公彦 著 (同文館出版)
多くの類書が企業価値評価を「する」側に向けたものであるのに対して、本書は利用者側に立って、評価結果やレポートを読んで分析する能力を身に着けられるように考えられている。このため、前半で一般的な企業価値評価方法を概説した後、後半では評価レポートの分析と活用を解説し、さらに実務で問題となる無形資産の価値評価や減損テストについても紙面を割いている。
前半の第1章で、M&Aの前提となる企業価値評価のプロセスと評価人選定のポイントなどから説き起こし、第2章では、資産サイドから見た企業全体の価値を示す「企業価値」、そのうち主要な事業の価値を示す「事業価値」、企業価値から負債を差し引いた株主に帰属する「株式価値」を示し、それらの評価手法として「インカム・アプローチ」、「マーケット・アプローチ」、「コスト・アプローチ」の違いを解説している。第3章では、インカム・アプローチの代表格である割引キャッシュフロー法(DCF)について、フリーキャッシュフロー(FCF)、加重平均資本コスト(WACC)から丁寧に説明している。
後半の第4章では、外部の専門家が作成した企業価値算定報告書(評価レポート)の見方、読み方について、DCF法と類似会社比較法で評価された各株式価値と貸借対照表から算出される簿価純資産価額との3者の関係を6ケース別に解説している。第5章では、上場企業は、M&A実施後に買収した企業が保有するブランド力や強固な顧客網、特許技術などの無形資産を時価評価して貸借対照表に計上することが要請されているため、その評価方式の代表格である超過収益法などを取り上げている。第6章では、M&A後に期待していた価値を実現できないことが明らかになった時点で、価値の毀損を買収で生じたのれんを含む資産から減額する必要が出てくるため、減損テスト実施に必要な価値算定の実務のポイントを紹介している。
著者は、バリューアドバイザリー合同会社代表社員、公認会計士・税理士
目次
第1章 実務プロセスで見る企業価値評価の進め方
第2章 企業価値評価を読み解くための基礎知識
第3章 実務に欠かせないDCF法
第4章 評価レポートの分析と活用
第5章 M&A実施後の価値評価 ~PPA
第6章 M&A実施後の価値評価 ~減損テスト