図書紹介
投資の大原則 人生を豊かにするためのヒント[第2版]
バートン・マルキール/チャールズ・エリス 著
鹿毛雄二/鹿毛房子 訳
(日本経済新聞出版)
著者マルキールの「ウォール街のランダム・ウォーカー」と、エリスの「敗者のゲーム」は、資産運用の世界では、言わばバイブルとされる名著である。その2人が、本書を発刊したのは、これまで個人投資家に対するアドバイスは滅茶苦茶で、まともなものがほとんどなかったからだという。そこで、一般の読者のために、アインシュタインの「できるだけシンプルに、しかしシンプル過ぎないように」にならって、基本原則に絞って書いている。
彼らは、分散投資、リバランス(債券と株式の配分調整)、定期定額積立投資、手数料の安いインデックス・ファンドが投資を成功させる最良の方法であると教えている。それは、次版で増やした第Ⅵ章で、リーマンショック後も変わらないと主張している。
資産運用には3つの重要な問題があるとされる。第1の資産配分は、株式や債券といった資産を、長期的にどういう割合で持っているのが望ましいかを決めることである。第2のマーケット・タイミングは、長期的に決めた資産配分比率を維持しながら、短期的に特定の資産を売買することである。第3の銘柄選択は、配分比率を決めた各資産に、具体的にどのような銘柄の株や債券を組み入れるかである。
彼らは、資産配分が特に重要で運用成績を決める最大要因であると主張し、マーケット・タイミングや銘柄選択の影響はほとんどないと考えている。むしろマーケット・タイミングや銘柄選択に基づいて投資すると運用機関に対する報酬や証券会社に支払う売買手数料などの多くの費用が掛かり、その分だけ確実に投資リターンが下がるともいう。このため、投資家は人気株を高値掴みし、出遅れ株を投げ売りする等して資産を減らしている。
このため彼らは、KISS(Keep It Simple, Sweetheart)ポートフォリオを築くための九つの基本ルールを示した上で、それらに基づく年齢別の資産配分計画を2パターン提案している。マルキールの提案する慎重な人向きと、エリスの提案する長期的なリターンを求める人向きである。本年から新NISAが始まり、資産運用への関心が高まっている中、先人たちの基本に立ち返った解説に耳を傾ける意義は大きいだろう。
著者のバートン・マルキールは、プリンストン大学名誉教授、チャールズ・エリスは大手公的・私的年金・財団等機関投資家向けコンサルタント。
目次
- I まず貯蓄を始めよう
- II シンプルな投資法
- III一に分散、二に分散、三に分散
- IV 大きな失敗を避けよう
- V 私たちが勧めるKISSポートフォリオ
- VI 暴落期でもあてはまる大原則