商品での差別化が難しくなっている昨今、金融機関が顧客に取引を続けてもらい、よりビジネスを拡大していくためには、現場の営業員の専門性を高めることが不可欠だ。「金融の専門性を備えた職員を育成していかなければ…。しかしどうやって…」とお悩みの人事部、人材開発部の方も多いことだろう。そのようななか、金融機関の職員のスキルアップに非常に適しているのが日本証券アナリスト協会認定アナリスト(CMA)資格だ。
「CMAのことはもちろん知っている。ただ受験率や合格率が問題なんだ…」という反論が返ってくるかもしれない。確かにCMAは「金融のプロフェッショナル」の証とも呼べる資格で、試験までに途中離脱する人もおり、ふるいをかけられた受験者の合格率も2013年から2017年まで5年連続で50%を切っている状況だ。
その一方、現在の人材教育というと、学習手段や学ぶべき分野も幅広くなったがゆえに「個人個人の自主性を尊重する」といった方針のもと、研修業者からの提案を幅広く社内のインターネットインフラ(イントラネット)にずらりと並べ、社員の自主性に任せているところも多い。
現場の営業員たちは社内データベースにアクセスすれば、金融マーケット、税務、不動産、営業ノウハウ、過去事例、リーダーシップ、プレゼンテーション、アンガーマネジメントなど様々なコンテンツに手を伸ばせるようになった。なかには、タブレット端末が1人1台貸与され、職場や自宅を問わず、資料や動画を見れる金融機関もある。
しかし、本当にそれでいいのだろうか。業者からの提案内容を吟味もせず「選ぶのは各部署・本部だから」と、金融機関にとっては命ともいえる人材教育を現場任せにしてはいないだろうか。あらゆるコンテンツをイントラネットにあげて、職員全体のスキルが上がってきている実感を得ているだろうか。胸に手をあてて、引っかかる部分があるのであれば、少しずつ現状を変えていかなければならない。
金融商品は目に見えるモノではなく、数字の世界であるため、リテールにせよホールセールにせよ、その伝道者が商品や裏側のロジックを深く理解していないと、相手にも深く伝わることはあり得ない。
現場の若手職員もいつの日か、キャリアを積み上げて本部で経営企画や商品開発に携わったり、マネージャークラスや経営幹部層になったり、当社(当行)を支える立場になっていく。日進月歩の速度で金融工学が発達している昨今において、専門的な金融スキルを持たない職員が引っ張る組織に明るい未来が待っていると言えるだろうか。
かつて、これほどIT化などが進行していない時代の研修担当者であれば、自社の経営方針に基づき、自社に今最も必要なスキルを真剣に考え、戦略的に自分で研修メニューを構築していた。例えば、アジアや欧米のシェアを取りいこうとするメガバンクと、縮小傾向にある日本の地方に根を張る地銀では、求められる研修メニューが異なるのではないだろうか。
金融機関の主要な資産のひとつが人材(人財)であり、人材資源管理は金融機関の競争力を左右する大きなファクターだ。自社の人材開発を担う担当者であれば、まず、あらゆる分野で有用であるCMAでは一体どんなことが学べて、自社にとってどんな強みとなるかを調べるところから始めてみてはどうだろうか。