CIIAセミナー

CIIAセミナー『金融システムに関する考察 ~2羽の白鳥の話~』

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あなたは知っているか?グリーン・スワンを!

昨今、金融システムとの関連で注目が集まる、ブラック・スワンとグリーン・スワン (ブラック・スワンの気候変動版)とは? 2021年3月30日(火)12時からオンライン配信された、当協会の前原専務理事によるCIIAセミナーのアーカイブがご覧いただけます。

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CIIA資格は、国際的に認められた証券アナリスト資格です。国際的に通用する証券アナリストの育成を目的としています。日本でCIIA試験が受験できるのは、CMAのみ!

CIIA(国際公認投資アナリスト)詳細

前原専務理事

前原 康宏 CMA
公益社団法人 日本証券アナリスト協会 専務理事
国際公認投資アナリスト協会(ACIIA) 会長

2021年3月30日 33分19秒

<CIIAセミナー>
金融システムに関する考察 ~2羽の白鳥の話~

講演の英語版がご覧いただけます(ACIIA website)WIN

2021年3月30日  5分25秒

<資格紹介>
CIIA資格とは?

質疑応答

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セミナー当日は、チャットでたくさんのご質問をいただきまして、ありがとうございました。時間内に回答できなかった以下2つのご質問について、講演者の前原専務理事がお答えします。回答をご覧になる場合は「回答」のボタンをクリックしてください。


質 問

[hikaruさん] Black Swan か Green Swan か、はたまた Gray Rhino かという分類に当てはめることには、意味はありません。タレブ氏はコロナ禍を Black Swan ではないと言い、また同氏が助言するファンドはコロナ禍の中でも高いパフォーマンスを示している、という点を認識すべきかと思います。

タレブ氏助言のテールリスクファンド、3月はプラス3612%のリターン(Bloomberg)WIN

コロナパニックで「巨額の富を築いた人」たち、その知られざる正体(マネー現代)WIN

※上記2つの記事はhikaruさんご提示の参考資料

興味深いコメント有難うございます。分類に当てはめることが重要ではないというご指摘はその通りですが、イメージを共有するためにBlack Swan、Green Swan、Gray Rhino(灰色のサイ)について私がどう捉えているのかを若干説明させてください。なお、仰っているGray RhinoというのはMichele Wuckerという人が2013年にダボスで開催されたWorld Economic Forumで初めて言及したと言われています。

まず、これら3つの動物の比喩の最大の相違点は、Black Swanは「発生確率が極めて低い出来事(highly improbable)」、Green Swanは「発生確率は高いが、いつ発生するか分からない出来事(highly probable, but uncertain timing)」、Gray Rhinoは「発生確率は高いが、無視されている出来事(highly probable, yet neglected)」ということではないかと思います。

一方、3つの動物に共通しているのは「インパクトが大きいこと」、「出来事の発生確率が正規分布に従っているという現在の標準的な理論では説明できないこと」の2点だと思います。つまり、伝統的、標準的な考え方では対応できないという点が重要であると思います。

タレブ氏のBloomberg TVのインタビュー記事(The pandemic isn't a Black Swan but a portent of a more fragile global system.)によれば、"The Black Swan was meant to explain why, in a networked world, we need to change business practices and social norms, not to provide 'a cliche for any bad thing that surprises us.' ... Besides, the pandemic was wholly predictable."と述べています。また、タレブ氏は2007年の著書の中で"As we travel more on this planet, epidemic will be more acute - we will have a germ problem dominated by a few numbers, and the successful killer will spread vastly more effectively. I see risks of a very strong acute virus spreading throughout the planet."と述べており、今回の新型コロナ感染症を予告しているように読めます。

しかしながら、過去の歴史をみれば、人類の歴史上、金融危機は何度か発生しており、かつ周期的に発生しています。同様に、感染症のパンデミックも過去に何度か発生しており、かつ周期的に発生しています。ただし、これらの周期は必ずしも一定の期間がある訳ではありません。私の解釈では、2007~2008年の国際金融危機をBlack Swanと呼ぶならば、同じような程度でパンデミックをBlack Swanと呼ぶことは可能であると思っています。パンデミックであるBlack Swanと気候変動であるGreen Swanの違いは、パンデミックの場合完全に元の状態に戻れるかどうかは分かりませんが、ワクチンの開発によってかなりの程度元の状態に戻れるのに対し、気候変動は地球の温度が一定値まで上昇してしまうと元の状態には戻れないという意味で不可逆的な出来事である点だと思います。

私が今回の講演で強調したかったのは、Black Swanにせよ、Green Swanにせよ、あるいはGray Rhinoにせよ、伝統的な、標準的な見方でパンデミックや気候変動の問題を考えてはいけないという点です。特に、気候変動の場合は、不可逆的な出来事なので、グローバルベースで迅速に対応する必要がある点も重要であると思っています。

質 問

[annさん] いわゆる資本コストも6つの資本のコストと考えるべきだと思いますが、数量化するにはどのような手法が考えられているのでしょうか。(6つの資本:講師資料20頁に記載の製造資本、人的資本、金融資本、知的資本、社会資本、自然資本)

資本コストとは、企業が事業活動を行ううえで必要となる資金の調達コストです。その面からは、企業にとって資本を使って生み出す経済的付加価値が金銭的に評価できることが必要であると思います。私が講演で掲げた6つの資本のうち、製造資本、人的資本、金融資本、知的資本については経済的な価値評価が可能な資本であります。

一方、社会資本、自然資本は従来公共財として考えられており、企業にとって経済的な価値評価をすることができない外部不経済の問題として扱われてきました。しかしながら、今やサステナビリティの観点から企業活動を評価しなければならないとすれば、従来外部不経済として市場経済の外側で扱われてきた社会資本や自然資本を企業としては内部化することが必要となってきます。例えば、自然資本でみれば、温室効果ガス削減のための排出量取引制度があります。サステナビリティに注目が集まる中、外部性を持つ社会資本や自然資本の経済的価値を「数量化」する努力がなされているのが現状だと思います。

また、資本コストを企業が将来生み出す経済的付加価値を現在価値に直すための割引率と捉えると、社会資本や自然資本に適用する資本コストは、製造資本、人的資本、金融資本、知的資本とは異なる考え方を適用しなければならないように思います。


※質問者のお名前は当日チャットで使われたハンドルネームです。

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