図書紹介
地銀と中小企業の運命
橋本卓典 著(文春新書)
本書は、ベストセラー「捨てられる銀行」で金融行政・業界に一石を投じた著者の最新刊である。「捨てられる銀行」では、担保と保証に依存し、企業の事業性すら理解できず、低金利しか提案できない付加価値ゼロの貸し出しをノルマ営業で続けている銀行は生き残れないとのメッセージを投げ掛けていた。
そして本書では、今必要なのは、企業の課題解決を通じて、地域を活性化させることを持続可能な収益事業として実現できる経営力を持つ銀行であると主張している。人口減少地域では、優れた中小企業であっても、財務、人材、情報などの「経営基盤」が脆弱なため、成長が難しいケースが多い。こうした課題を解決できる最も有力な組織は、地域金融機関をおいて他にないとも問題提起している。
本書の前半では、不良債権処理のために導入された「金融検査マニュアル」は、2019年末に廃止されたにもかかわらず、いまだに多くの金融機関がその呪縛から逃れられずに、ビジネスリスクを取ることに消極的なことを指摘している。しかし、本書後半ではこうした中にあって、取引先の事業に直接関与して経営改善に取り組む動きが出てきていることを、具体例を挙げて提示している。例えば、山梨中央銀行、浜松いわた信用金庫、豊和銀行、北國フィナンシャルホールディングス、京都信用金庫などである。金融機関以外にも、板橋区立企業活性化センターやファミリー企業を支援するフィーモの活動も紹介している。
なお、最後に特別附録として、金融庁「業種別支援の着眼点」についても解説している。
著者は、共同通信社編集委員。
目次
第1章 「ゼロゼロ融資40兆円」という時限爆弾
第2章 「金融検査マニュアル」が銀行をダメにした
第3章 「捨てられる銀行」と「生き残る銀行」を分かつもの
第4章 「経営改善計画」をどう作成・実行するか
第5章 「自分事」の企業支援
第6章 10年後に評価される仕事
第7章 「ファミリー企業」をどう支援するか
第8章 「企業支援」のプロたち
第9章 「リレーションシップ・バンキング」の実践
第10章 「銀行の常識」を捨てた銀行
第11章 ビジネスはコミュニケーションから生まれる
特別附録 金融庁「業種別支援の着眼点」徹底解説