図書紹介

ファミリービジネス白書 2022年版 - 未曾有の環境変化と危機突破力 -

ファミリービジネス白書企画編集委員会 編(白桃書房)

 ファミリービジネスは、家業型の中小企業からトヨタ自動車を筆頭にプライム市場上場の大企業まであり、きわめて多様である。また、欧米のファミリービジネスでは特殊株やファミリーオフィスなどを通じてオーナーシップを保ちつつ、経営はプロの経営者に任せているのに対して、日本では、オーナーシップではなく、ファミリーによる経営の実力によっている上場企業もある。この間、監修者によれば、ファミリービジネスに対する評価は国内外での温度差が大きく、海外ではファミリービジネスこそが国の経済産業を支える主役との認識が一般的になってきているのに対して、国内での評価は依然として低く、本書刊行の趣旨は、わが国のファミリービジネスの正当な評価獲得にあるとしている。

 第1章では、ファミリービジネスについて、現況や定義、環境変化への対応といった本書の概要を提示している。第2章では上場している1,800社超のファミリービジネス全社を抽出して、所有ならびに経営におけるファミリーの影響度を分析し、財務業績を非ファミリービジネスと比較して、その優位性を明らかにしている。また、2015年版、2018年版との連結により、全ての上場ファミリービジネスの過去10年間のデータが整備されたことから、今後も分析を深めていくと表明している。第3章では、経営危機とファミリービジネスを特集し、今回のコロナ禍における国内外のファミリービジネスの実態について、緊急アンケートやインタビューで具体例を挙げて解説している。特に注目されるのは、手堅い事業運営の結果としての手元流動性の高さ、地域社会と密着した相互扶助と復元力?(レジリエンス)であったと指摘している。

 最後に付録で、上場ファミリービジネスの業績を全市場および市場別に集計した後、個別企業別データも掲載されているので、企業オーナーを顧客に持つプライベートバンカーには大変参考になるだろう。

監修 後藤俊夫 日本経済大学大学院特任教授
企画編集 落合康裕 静岡県立大学経営情報学部教授
編著 荒尾正和 ほがらか信託株式会社常務取締役 中小企業診断士、特定社会保険労務士、CIIA
編著 西村公志 アップスマート株式会社代表取締役 中小企業診断士

目次

第1章 ファミリービジネスの概要
 第1節 ファミリービジネスの現況
 第2節 ファミリービジネスの定義
 第3節 環境変化におけるファミリービジネス
第2章 上場ファミリービジネスの経営分析
 第1節 ファミリービジネスの比率と変動 
 第2節 財務業績
 第3節 所有を伴わないファミリービジネス
 第4節 経営者属性と財務業績
 第5節 業種別動向
第3章 経営危機とファミリービジネス
 第1節 経営危機と長寿企業の行動 
 第2節 コロナショックへの長寿企業の対応に関する緊急調査
 第3節 コロナ禍の経営行動:国内長寿ファミリービジネス事例紹介
 第4節 コロナ禍における海外のファミリービジネスの動向
 第5節 「なぜ」「どのようにして」ファミリービジネスはレジリエンスを高め、危機を乗り越えるのか?COVID-19パンデミックからの教訓
 第6節 COVID-19期間中のアジア・ファミリービジネスの概観 激動の時代における並外れた努力
 第7節 ファミリービジネスに学ぶ危機対応
付録 上場ファミリービジネスの業績

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