図書紹介
「会社の相続 ~事業承継のトラブル解決~」
後藤孝典 著(小学館)
本書は、社長の急逝等で会社経営の継続が困難となった際に、いかにして事業承継していくかを8つのケーススタディで解説している。各章の前半は、事業承継・再生専門の弁護士である著書が実際に手掛けた案件を基にしているため、架空とはいえ現実味に溢れるストーリー展開となっている。そして各章の後半は、前半で取り上げたケースについて法人税法、相続税法、民法相続法などの改正点も踏まえて、詳しく説明している。
著者が特に注目しているのは、スピンオフと呼ばれる会社分割の活用である。会社が当面不要な資産だけを旧会社に残し、分割型の会社分割により重要な資産を新会社に切り出し、その新会社が独立して事業を継続していく手法である。
また、これまで遺留分減殺請求が行使されると、株式や事業用資産が共有されているため、会社経営が困難になりがちであったが、民法改正により遺留分侵害額に相当する金銭支払に変更されたことも円滑な事業承継にはプラスとしている。
このほか、M&A、名義株、一般社団法人の活用なども取り上げており、会社の相続に関わる問題点を幅広く学べる。
事業承継は複雑で難しいと考える初心者にはケーススタディなので取り組みやすいうえ、実際に事業承継に携わっているベテランにも読み応えのある一冊である。
著者は、虎ノ門後藤法律事務所代表、弁護士
目次
第1章 私、社長になります!
<身内に後継者がいない><廃業かM&Aか><赤字会社の承継>
<古参従業員に事業を譲る>
第2章 老いて大株主
<属人株><株の相続と相続税><金目当てに寄ってくる人々>
第3章 戻り遺贈
<遺留分減殺請求><結婚した妹からの要求><同族企業の承継>
第4章 結婚か婚姻か
<株式の相続><遺留分><同族会社の承継><一般社団法人と株式信託>
第5章 先妻の子、後妻の子
<相続税が払えない><株式の相続><相続制度の矛盾>
第6章 名義株
<名義株><同族企業の承継><新設会社を乗っ取る方法>
第7章 那須岳ホテル田村
<銀行破綻><会社分割で再生>
第8章 洋食屋五郎
<赤字会社の承継><会社分割><競争入札(ビット)>