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図書紹介

「黒田日銀-超緩和の経済分析-」

大村敬一/翁邦雄/北坂真一/柴本昌彦/田幡直樹/早川英男/細野薫著 日本経済新聞社編
日本経済新聞出版社 2018.10 215ページ 2,200円(税抜き)

「黒田日銀-超緩和の経済分析-」 PDF (195KB)

2013年3月に就任した黒田日銀総裁は、18年4月に再任され現在2期目となっている。本書は、17年11月から18年3月にかけて日経新聞の経済教室欄に日銀の金融政策に関する論考を執筆した7人が、さらに加筆して取りまとめたものである。第1期の黒田日銀の評価と、第2期の展望や課題について、様々な観点から論じている。

第1期のスタートで打ち出した大胆な異次元緩和、いわゆる黒田バズーカについては、世間でも概ね一定の評価がなされているが、公約の物価上昇率2%は結局達成されず、16年のマイナス金利の導入に伴うマイナス面などからイールドカーブの見直しがなされ、ステルステーパリング(隠れた量的緩和の縮小)とも呼ばれるような状況に至っている。

著者らの論点は多岐に亘り評価も分かれているが、敢えてポイントを挙げれば次のとおりである。

第1章では、黒田日銀の金融政策の波及経路は伝統的な銀行貸出ではなく、為替レートと株価であると指摘し、デフレを阻止したことを評価している。

第2章では、物価上昇率2%の目標は、世界の主要な中央銀行に合わせた消極的な理由だけではなく、高めの期待物価上昇率によって好況期に名目金利を高めておくことで、将来の不況期に金利引き下げ余地を確保するためとしている。しかし、2%の物価上昇率が実現可能かとなると、以前に比べて、雇用の改善や設備稼働率の上昇が物価上昇に反映しなくなってきていると指摘している。

第3章では、13年1月の政府と日銀の共同声明で、政府は持続可能な財政構造を確立するための取り組みを着実に推進することになっていたが、実際には異次元緩和の継続で財政規律が失われていると憂慮している。

第4章では、18年4月の日銀「展望レポート」で2%の物価目標の達成時期を削除したこと、7月に小幅の長期金利上昇を容認したことから、「持久戦」への転換を明確にしたと整理している。そして、金融緩和長期化の副作用として、①金融仲介機能への悪影響、②株式市場の資金配分機能阻害、③財政規律の弛緩を挙げている。

第5章では、世間には日銀の個別株式買い入れは企業経営への介入リスクがあるため、ETFの購入が望ましいとの議論がある。しかし著者は、株価が下落すれば日銀の買い出動があると認識されれば、市場参加者の期待形成が修正され、投資の判断や行動に慢性的な歪みが生じると言う。パッシブ運用の巨額の日銀マネーの存在が、市場の価格発見機能を妨げるとともに、「物言わぬ株主」であるためコーポレートガバナンスにも悪影響があると指摘する。

第6章では、長期国債購入による量的緩和でなく、ETFやJ-REITなどの資産購入に重点を置いた質的緩和は、有効な手段だと評価している。しかし、政策の意図や判断基準が明確には示されておらず、市場との対話がより一層望まれると言う。

第7章では、金融政策運営は、「量」か「金利」かではなく、「量と金利の最適解を追求する方式」に進化してきたと評価している。ただ、量的・質的緩和政策が十分な効果を発揮するには、①フォワードガイダンス、②非国債有価証券類の購入、③マイナス金利、④イールドカーブ・コントロールなどの補完政策の併用が不可欠であると主張している。

2%の物価目標の達成は難しいとみられる一方、20年の東京オリンピック以降、景気は後退するとの見方が大勢である。巨額の財政赤字で財政出動の余地は乏しく、今後の金融政策運営にはさらなる困難が予想される。資産運用アドバイスを行う際にも、金融政策への目配りは不可欠である。

著者は、同志社大学経済学部教授(北坂)、学習院大学経済学部教授(細野)、法政大学大学院政策創造研究科客員教授(翁)、富士通総研経済研究所エグゼクティブ・フェロー(早川)、早稲田大学大学院経営管理研究科教授(大村)、神戸大学経済経営研究所准教授(柴本)、ジョンズ・ホプキンス大学高等国際問題研究所ビジティング・スカラー(田幡)。

目次

 第1章 黒田日銀の評価と課題(北坂)
 第2章 物価上昇率2%目標の意義とリスク(細野)
 第3章 共同声明に立ち返れ(翁)
 第4章 「短期決戦」から「持久戦」へ
      -日銀緩和の軌跡と課題(早川)
 第5章 ETF買い入れの功罪
      -企業経営に緩みか、出口急げ(大村)
 第6章 ETF・REIT購入は有効
      先行きの指針 意図の明示を(柴本)
 第7章 量的・質的緩和政策(QQE)の成果と教訓(田幡)

 
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