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現在位置:ホームの中の協会概要の中の理事からのメッセージの中の2012年2月1日 バランスのとれた金融システムの発展に向けて
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理事からのメッセージ

バランスのとれた金融システムの発展に向けて

 2008年からの世界的な金融危機は、金融部門における危機だけに注目すれば、その程度は和らいできています。しかし、先進国において引続きみられる高水準のレバレッジなど過去の行き過ぎが是正されるまでには、なお相当の時間を要すると見込まれます。その後、欧州を中心に財政危機が発生し、行き過ぎたレバレッジのリスクは民間金融部門から政府部門にもシフトしてきています。こうした危機に対応する過程で、ギリシャやイタリアの首相が退陣するなど政治的な不安定も増加しました。更に、米国のウォール・ストリートにおける抗議運動に見られるように世界の各地で富の格差に対する不満も高まり、社会的な不安定性も増してきています。

 このように金融システムの危機が、政治面や社会面といった広範な分野にまで不安定化を招いている状況を見ると、改めて金融システムの安定を確保することの重要性が認識されています。G20諸国の政府・中央銀行の政策当局者は、金融危機の再発を防止し、金融システムの安定を確保するために様々な努力を行っており、そうした努力の一つが金融システムに対する規制の見直しです。今回の世界的な金融危機の背景には、過剰なレバレッジや過剰な貸出の増加といった「過剰な金融化(excessive financialisation)」があり、「過剰な金融化」を十分に規制しなかったことが金融危機の要因の一つであるとの指摘がなされています。

 確かに、金融危機以前には、金融部門の拡大は市場メカニズムによる効率的な資金配分を通じて成長を促すので望ましいという効率性を重視する見方が一般的でした。こうした見方によれば、規制を緩和することが成長を促進することになります。この結果、金融部門は拡大を続け、その規模は実体経済の規模を大幅に上回ることになりました。「過剰な金融化」の発生です。肥大化した金融部門は実体経済に大きなマイナスの影響を与えることになり、金融部門は実体経済の安定的な持続的成長に寄与するという本来の役割を忘れてしまったのです。

 今回の金融危機で、金融資本市場は自律的な是正メカニズムを必ずしも持っていないことや金融システムが不安定化した場合のコストが極めて大きいことが明らかになりました。先に述べたように、金融部門の肥大化も大きな問題です。従って、規制の見直しは、実体経済の成長と金融システムの安定をどのようにバランスさせるのが望ましいかという観点から行われています。更に、経済発展を進めていくアジア諸国では、金融部門の拡大によって国民の所得水準を引き上げ、貧困層を減らしていくためには、どのような規制が望ましいかという公平性の観点からも見直しが検討されています。

 これからの金融システムは、効率性、安定性、公平性という観点からバランスのとれた形で発展していくことが求められています。それを実現するためには、政府の規制と市場メカニズムのバランスや金融部門と実体経済部門のバランスといった様々なバランスを勘案したマクロ経済政策の運営や金融システム規制の実施が必要です。こうした金融システムの新たな展開を分析するうえで、プロフェッショナルとしての証券アナリストの役割は今後一段と重要になってくると思います。

2012年2月
公益社団法人 日本証券アナリスト協会 理事
前原 康宏
(一橋大学大学院 教授)

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