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理事からのメッセージ

2010年4月1日

仕事柄、経済雑誌に目を通す機会が多いが、必ず目につくのが「ランキング」である。「銀行ランキング」「CSRランキング」「大学ランキング」「病院ランキング」「自治体ランキング」・・・ 実は私自身はこのような何でもランキングには殆ど興味を覚えないというのが正直なところである。

ランキングとは、序列による判定であり、そこには序列の相対的上位が下位よりも良いという価値観があらかじめ内包されている。否定はしないが、嫌いである。日本の名目GDPが年内にも中国と逆転することを評して、「日本が世界第二位の経済大国の地位から転落する」と言われることが多いが、このような表現からうかがわれる価値観も序列づけの中での順位重視というものである。しかし、冷静に考えれば、10倍以上の人口を擁する中国経済が、その発展の結果として規模において日本を上回るのは当然とも言える。他国や他者との比較において、自らを評価する尺度を他者に求め、序列の中での順位の高低に過度に重きを置いて一喜一憂するのは知的に洗練された態度とはいえないであろう。

「勝ち組か負け組か」という判定も世間では盛んのようである。この分類は企業に関して使われることが多いが、これも序列判定の変形であって、同様に嫌いである。

「グローバル・スタンダード」という言葉もよく使われてきた。この言葉に関していえば、厳然とした「世界標準」が所与のものとして存在するかのように使われることが多く、この言葉を突きつけられた側は沈黙せざるを得ない状態に追い込まれたりするが、しかし、本当に「グローバル・スタンダード」は幅広く存在しているのだろうか。一見したところ分かりやすそうな自分以外の尺度を引っ張ってきて、その尺度に適合していれば安心し適合していなければ不安になる、そのような思考様式は果たして健全であろうか。他者と同じことによって安心する習慣は健全であろうか。

当たり前だが、価値判定の尺度は実は多様である。証券アナリストの仕事は証券に内在する価値を見極めることである。その際、比較も1つの手法ではあるが、比較だけでは仕事は十分に達成されないことも多いであろう。企業やその発行する証券に内在する固有のものに焦点を当てていく、そこには知的に真摯な姿勢と本質を見極める洞察力が要求される。何かと「同じこと」を以ってよしとするのではなく、「違うもの」を見極める力が必要とされる。序列判定だけではたどりつけない結論にたどり着くことが求められている。価値判定の尺度を自ら生み出すことが求められている。

あまりにも類型化・単純化された比較・評価手法が世間に蔓延していることを憂うと同時に、証券アナリストの皆さんの知的に真摯な努力に期待したい。

2010年4月
社団法人 日本証券アナリスト協会 会長
稲野 和利
(野村アセットマネジメント 取締役会長・検定会員)

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