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現在位置:ホームの中の協会概要の中の理事からのメッセージの中の2010年3月1日『当事者能力を失った上場会社の悲劇』
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理事からのメッセージ

『当事者能力を失った上場会社の悲劇』

 上場会社のタイムリー・ディスクロージャーに関する仕事に就いたのは、バブル崩壊後の不良債権処理の余波が上場会社を襲い始めた、平成8年頃のことでした。

 日住金や拓銀あたりから本格化した金融機関の経営破綻劇は、三洋証券・山一證券・長銀・日債銀といった大手クラスにまで燃え広がり、不良債権の裏にある過剰債務に耐えかねて経営破綻に追い込まれていく事業会社も交えて、「東証第一部上場会社」が次々と市場から退場するのを目の当たりにしました。

 景気が悪いのはどこも同じと我慢比べをしたために再生への着手が遅れた、という意味ではどの会社も変わらないように見えましたが、事業会社の破綻は、水面下で準備して、自らの意思で幕を引くというタイプのものだったのに対して、金融機関の破綻の多くは、衆人環視の中で秒読みが進むという劇場型で、会社自身は当事者能力を失ってしまって誰がキャスティングボードを握っているかわからない、というタイプのものでした。

 タイムリー・ディスクロージャーのタイミングや内容は的確な投資判断と公正な価格形成に大きな影響を与えますので、上場会社にアドバイスを提供するのは取引所の大事な仕事です。しかし、そうした仕事がいつでもいい成果をもたらすというわけではありません。いいタイミングでいい情報を出してもらおうにも、当事者能力を失い、明日自分がどうなるかすら決められる立場にない上場会社には、いいタイムリー・ディスクロージャーは望めません。

 マスコミには会社の利害関係者発の情報が踊り、会社は「まだなにも決めていない」というコメントを繰り返し、投資家は氾濫する情報の中で真実を手探りしながら取引に参加するという異常な事態。一番苦悩するのはこういうときです。

 重大な事実が報道されるたびに会社にコメントを求めても、会社がコメントする「会社から見た事実」が、必ずしも的確な投資判断の役に立つとは限らない。しかし、そうしたコメントが何度も繰り返して出ることで、会社の当事者能力に疑問が生じていることが伝わるはず。そう思って執拗にコメントを求め続けたのが昨日のことのようです。

 先日法的整理を申し立てた航空会社には、あのころの金融機関の姿が重なって見えました。

 会社の内部と外部の情報ギャップを埋め合わせるのがディスクロージャー。ただし、これは会社に当事者能力があるときでないと、期待どおりには機能しません。当事者能力を失った上場会社の悲劇は、取引所にとって試練の時でもあります。

2010年3月
社団法人 日本証券アナリスト協会
理事 静 正樹
(株式会社東京証券取引所 執行役員)

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