2008年11月4日

今回の米国発の金融危機、とくに9月15日にリーマン・ブラザーズが破綻してからの米国をはじめ各国の金融市場、政府、中央銀行などの動きはまことに目まぐるしいものがあり、まさに百年に一度の大事件に遭遇している感がありました。
当然のことながら、これを歴史上何度も繰返されて来た“バブルの生成とその崩壊”に新な1ページを加えたものと片付けてしまう気にはとてもなれません。
私にとって大きな関心事は二つあります。一つはこんな大規模なバブルの形成と破裂を誰も事前に予知することも食い止めることも出来なかったのかという点、もう一つはこれからの世界はどうなるかという点です。
米国が10年にも及ぶ住宅建設ブームを放置して来たこと、いや、放置というよりむしろ、旺盛な住宅投資に支えられた好景気の持続をサポートするような低金利政策をとっていたことなど米国の経済運営に問題があったという声も聞かれます。また、その間の一貫した住宅価格の上昇もあって、住宅投資、住宅金融の残高が膨張し、更に金融工学を駆使したそれらの証券化も大規模に行われ、バブルを一層ふくらませたということが出来ましょう。いつかは住宅価格の下落、住宅投資の減少でバブルははじけると考えるのが当然の環境下にあって、しかも、地価バブルという日本の先例がありながら、それに対する備えは殆んど行われなかったわけです。
しかし、これだけ大きな危機が到来し、大きなコストを支払わなくてはならなくなった以上、政府や中央銀行は今後のこの種の危機を未然に防ぐ方法を検討し実現する義務があると思います。米連銀のバーナンキ議長が9月に唱えた「マクロプルーデンス政策」は、まだ具体的な姿は明らかではありませんが、金融システム全体が抱えるリスクを何らかの形で常に把握、トレースし、それに応じた施策を実施していこうということではないかと想像しています。わが国でも是非同様の努力をしてほしいものです。
さて、これからの世界はどうなるかですが、既に沢山の見方、意見が発表されています。バブル崩壊の後始末にはなお相当な資金と時間がかかり、米国の負担は引続き大きく、その全世界に対するヘゲモニーは更に後退するといった意見が多いようです。
日本は幸いにも、先進諸国の中で今回のバブル破裂の影響が最も少なかった国であり、今迄以上にいろいろ支援が求められる立場になるのではないかと思いますが、それに応えられるような土台のしっかりした強い経済に成っていくにはどうすれば良いのか、企業はどう在るべきか、アナリストの皆様の一層のご活躍をお祈りします。
2008年11月
社団法人 日本証券アナリスト協会
理事 青木 昭
(日本証券金融顧問)


