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理事からのメッセージ

2008年8月1日

 「ユビキタス社会」化が進むとともに、パソコンはわれわれの生活に不可欠のものとなっている。10年くらい前にハイテク分野のリサーチアナリストS氏に刺激されてパソコンの自作に挑戦して以来、4台目を最近完成した。数年ぶりだったこともあってIT技術の進歩を実感するとともに、パソコンは、実にさまざまな要素が組み合わさってシステムとして成り立っていることを再認識した。家電製品、自動車をはじめ、さまざまなものでも同じだろう。

 パソコンのハードウエアはCPU、マザーボード、メモリ、ハードディスク、光ディスクドライブ、電源装置などの多くのパーツ(それがまた多くの部品から成る)で組み立てる。そして、キーボード、マウス、モニタ、プリンタなどの周辺機器を接続し、オペレーションシステムやワープロ、計算、ブラウザ、ウイルスチェックなどのソフトウエアをインストールする。さらにプロバイダーと契約して通信回線につなぎ、インターネットやE-mailが使えるようにセットアップする。こうして組み上げられたパソコンシステムを人間が正しく使って初めて情報機器としての機能を発揮することになる。

 完全に動いている時のパソコンシステムの情報収集・処理の機能は恐ろしいほどである。しかし、上記の構成要素のどこか一つがおかしいと機能が十分に発揮されない。パーツに使われている小さなピン1本が曲がるだけでパソコンが動かないことさえある。

 また構成要素のどこか一部分の性能がいたずらに優れていても、意味がないどころか、過熱したり、処理が間に合わなくなって止まってしまうこともある。最新のCPUやソフトを使うには、環境条件がバランスよく整っていなければならないのである。「他の条件にして一定であれば」ではなく、「他の条件が整っていれば」という考え方でいかなければならない。

 中国語ではコンピュータを「電脳」などと呼ぶが、さまざまな要素が組み合わさって成り立っているという意味では、パソコンは社会の縮図のように思える。実体経済と金融とがうまく噛み合わないと好ましくない現象が起こってしまうし、経済・金融は法律や制度や地政学的情勢などとも関係している。どこか一部分に問題があったり、また突出したりすると、社会システム全体として、望ましくない資源の無駄遣いなどが生じてしまうだろう。

 世の中全体としてそれぞれの分野が専門的に深く掘り下げられる傾向が強まっているように感じられる。専門的職業人である証券アナリストの中でも、それぞれの専門分野がある。それぞれの専門分野が競って高度化していくことは社会の発展のために不可欠であり、自分の専門以外の分野にも大いに関心を持って切磋琢磨していくべきであろう。そこに新たな発見があるかもしれない。

 しかしながら、証券アナリストの分析は人間社会を対象としている以上、「木を見て森を見ず」になってはならないと思う。金融だけで成り立つ社会はあり得ない。社会の一部分である金融のさらに一部分だけを取り出して一見もっともらしい「理論なき計測」を行っても、それと社会全体としての付加価値の創出との関係は「バタフライ効果」でも説明できないのではないか。現実社会の中で「高機能だが役に立たないパーツ」に終わらないためには、自分の専門分野を超え、幅広く他の分野での動きも観察しながら考える努力を続けることが必要だろうと思う。

 当協会会員の所属する業界が多様化してきていることは、証券アナリストの力が世の中で広く求められていることの証左と言えよう。逆に言えば、証券アナリストは世の中に幅広く通用する知識や考え方を備えていることが必要である。通信教育講座で学んだ知識を、自主的な継続学習によって着実に深め、広げていくことが期待されている。

2008年8月
社団法人 日本証券アナリスト協会
理事 出版・編集部長
土屋 俊彦

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